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「オミクロン株」についてわかっていることは? 追加接種はどのくらい持続する?:新型コロナウイルスと世界のいま(11月)

いまから約1年前の2020年11月9日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して何の“武器”ももっていなかったわたしたちに向けて、臨床試験の中間発表で90%以上の有効率を誇るファイザーのワクチンが発表された。人類はその後もアルファ株やベータ株、デルタ株といった数々の変異株に晒されてきたが、さまざまなメーカーによって製造されたワクチンがCOVID-19の重症化や死亡を防いでいる。

世界の新型コロナウイルスの累計感染者数は21年11月30日時点で2.6億人以上にのぼり、死亡者数は500万人を超えた。パンデミックが始まってから約2年が経ったいま、裕福な国々では3回目のワクチン接種であるブースターショットも始まっている。ワクチン接種を完了していても感染する「ブレイクスルー感染」が報告されているデルタ株に対しても、ブースターショットは93~94%という高い感染予防効果をもつと報告されているのだ。

デルタ株は欧州やロシア、韓国、ヴェトナムなどで感染を拡大しているが、重傷者や死亡者の多くは未接種の人たちである。こうした状況を受け、感染者数が急増しているギリシャは60歳以上の高齢者にワクチン接種を義務づける方針を発表し、これを拒否すると月100ユーロ(約13,000円)の罰金を課すと発表した。またオーストリアもすべての成人にワクチン接種を義務づけるとしている。

さらに11月には新たな変異株「オミクロン株」も出現した。既存の免疫を回避すると考えられているこの変異株にワクチンの効果はあるのだろうか? COVID-19の重症化を予防する飲み薬の最新情報とは? 11月の動向を振り返る。

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30超の変異をもつ「オミクロン株」とは?

新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株(B.1.1.529)」は、南アフリカで初めて報告され、世界保健機関(WHO)によって「懸念される変異株(VOC)」に指定された。南アフリカの研究者らがオミクロン株の存在を明らかにしたのは11月24日のことだが、11月30日時点ですでに日本を含む20カ国以上でオミクロン株の感染者が見つかっている。

この変異株がどこで発生したのかは現在わかっていないが、南アフリカとボツワナで初めて検出されている。しかしのちの分析により、南アフリカの研究者による報告がなされた24日より前にオランダでオミクロン株への感染があったことが報告された。スコットランドではすでにオミクロン株への市中感染が疑われるケースも確認されている。

WHOの報告ではオミクロン株には32の変異があり、その多くはワクチンが標的とするスパイクたんぱく質に関する遺伝子にあるという。この変異の種類からオミクロン株は免疫逃避型だと考えられており、過去の感染やワクチンによってできた免疫の効果が薄まる可能性もある。それゆえ、ほかのVOCと比較してオミクロン株は再感染のリスクが高まることが示唆されているのだ。

オミクロン株がどの程度の重症度や感染力をもつのか、そしていま接種が進められているワクチンがこの変異株に対してどの程度の効果をもつかなどは、まだ明らかになっていない。しかし、現在のワクチンでも、ある程度の予防効果は期待できるという。イスラエルからの報告では、3回目となるブースターショットを受けた人々はオミクロン株に対する防護力をもつ “兆候”が見られたとしている。

この変異株の出現を受け、ファイザーはオミクロン株のデータを入手でき次第、ワクチンを新たにつくり直す必要があるかどうかを見極め、100日以内の出荷を目指すと発表。モデルナもまた、新たな変異株に合わせたワクチンの開発を進めているという。

ワクチンによる保護効果は6カ月で低下

米国の退役軍人保険局による調査で、2021年2月から10月までの間にワクチンの感染予防効果が大幅に低下したことがわかった。78万人の退役軍人の記録を調査した結果、デルタ株が米国に定着しつつあった3月上旬には、3種類のワクチン(ファイザー製、モデルナ製、ジョンソン・エンド・ジョンソン製)の感染予防効果がほぼ同等であったことがわかっている。

ところが3月に2回の接種後89%の有効率があったモデルナ社のワクチンは、9月には58%という結果になった。同期間中でファイザー製のワクチンは87%から45%に、そしてジョンソン・エンド・ジョンソン製のワクチンは86%からわずか13%にまで落ち込んだという。

また、65歳以上の退役軍人がワクチン接種済みだった場合、いわゆるブレイクスルー感染を起こしたとしてもワクチン未接種の同年齢の退役軍人に比べてCOVID-19による死亡率が76%(モデルナ製)、70%(ファイザー製)、52%(ジョンソン・エンド・ジョンソン製)低くなるという結果になった。

ブースターの効果は最初の2回の接種よりも長続きする可能性

3回目のワクチン接種となるCOVID-19のブースターショットは、ファイザーやモデルナのワクチンを2回目に接種したあとよりもはるかに強力で長期間の効果をもつことが小規模な研究で明らかになった。また、過去にCOVID-19から回復したのちに3回目のワクチンを終えた人たちは、ブースターショットによる効果がさらに大きくなることもわかっている。

ブースターショットによる抗体レヴェルは非常に安定しており、2回目のワクチン接種よりも長きにわたって効果が持続する可能性があるという。ファイザーやモデルナのワクチンでは、2回目接種後の9カ月後に中和抗体レヴェルが接種直後の約10分の1にまで低下することがわかっている。しかし3回目のブースターショット後は、2回目接種後の5倍ほどの抗体レヴェルになるという。

メルクの「飲む治療薬」の重症化予防率は30%

メルクが開発したCOVID-19の経口治療薬「モルヌピラビル」は、762人を対象とした臨床試験の中間報告でCOVID-19の重症化・死亡のリスクを約50%減少させるとして注目されていた。ところが1,433人を対象とした研究に基づく11月26日の最新報告では、プラセボ群と比較して重症化・死亡リスク減少率は30%だったと下方修正している。

モルヌピラビルは、ウイルスの複製中にウイルスのゲノムに変異をもたらすことで作用する。モルヌピラビルの代謝物質はウイルスのゲノムに組み込まれ、最終的にはウイルスが生存できなくなるほどのエラーを引き起こすのだ。なお、妊婦には使用しないことが推奨されている。

ファイザーの経口治療薬「パクスロビド」の効果

ファイザーの新しい経口治療薬「パクスロビド」は、パンデミックの収束に大きな影響を与えるかもしれない。臨床試験の中間解析報告では、発症後3日以内に治療を受けた患者において重症化や死亡のリスクがプラセボ群と比較して89%低下する結果になった。

この治験では、パクスロビドを投与された患者389人のうち3人が入院し、死亡者はゼロだった。プラセボ群385人のうち入院患者は27人おり、そのうち7人がその後に死亡した。

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パクスロビドはウイルスの増殖に関わる酵素の活性を阻害することで作用する仕組みだ。この薬は、抗ウイルス薬と抗HIV薬「リトナビル」と呼ばれる別の薬を組み合わせたもので、リトナビルには肝臓の酵素による抗ウイルス剤の分解を防ぐ働きがある。ただし、リトナビルはほかの薬の代謝に影響を与えることがあるので、心臓病の治療や免疫系の抑制、痛み止めの薬を含め、ほかの薬剤との併用には注意が必要だという。

COVID-19で2020年の平均寿命が低下

英医学誌『BMJ』で、37カ国を対象に新型コロナウイルスの平均寿命への影響を調査した研究の結果が発表された。2020年の“余命の損失”を推定したこの分析では、新型コロナウイルスによって平均寿命が最も縮んだのはロシアのマイナス2.32年で、米国ではマイナス1.98年、ブルガリアはマイナス1.75年、リトアニアはマイナス1.61年となっている。

感染対策が功を奏し死亡者数が少なかったニュージーランド、ノルウェー、台湾では逆に平均寿命が上昇した。今回の分析により推定された“余命の損失”は、2015年に流行した季節性インフルエンザの5倍以上だったという。なお、この分析に日本は含まれていない。

オミクロン株の出現は世界の警戒態勢を強化させ、世界は再びさまざまな選択を強いられることになった。オミクロン株が見つかった国からの渡航を禁止する措置や、3回目のブースターショットの大幅な加速、マスクの義務づけといった対策は、オミクロン株を完全に理解するまでの時間稼ぎと、蔓延を遅らせるための予防措置でもある。

幸いなことに人類は、いま武漢から初めて新型コロナウイルスの報告を受けたときよりもはるかに多くの知識と武器を身につけている。いずれにせよ、わたしたちにできることは限られているだろう。これまで通り「密」を避け、ワクチン接種に加えて手洗いやマスクなどの感染対策をし、そして新たな薬の開発を待つのみなのだ。

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